【連載:北欧、大人のぶらり旅】おいしいごはんと、旅の記憶。Vol.5
Vol.5 島サウナで整って、岩の教会で光を浴びる ~静かな時間と、熱気の間で~
旅も中盤。ヘルシンキに戻ってからは、フィンランド文化の真髄に触れる時間を過ごしました。
■ 船で行く、小島のサウナ
まずは、ヘルシンキのマーケット広場から小さな船に乗って約15分。「Lonna(ロンナ)島」へ。
ここはかつて軍事基地だった小さな島なんですが、今はサウナとレストランがあるだけの静かなリゾート地になっています。
予約していた公共サウナに入ったんですが、これが最高でした。
薪ストーブならではの、肌に刺さらないやわらかい熱気。パチパチという薪がはぜる音と、木のいい香り。
薄暗いサウナ室でじっくりと汗をかいたら、そのまま外に出て、目の前のバルト海へドボン!とはいきませんでしたが(笑)、海風に吹かれての外気浴は格別でした。
体が芯から温まって、頭の中がクリアになっていく感覚。
サウナの後に、島にあるレストラン「Adlerfelt」で食事をしたんですが、ここもまた良かった。
余計な装飾のないシンプルな空間で、素材の味が濃い料理をいただく。
「何もない」っていうのが、一番の贅沢なのかもしれませんね。
■ 岩をくり抜いた教会へ
ヘルシンキでどうしても行きたかったのが、「テンペリアウキオ教会」、通称「岩の教会」です。
その名の通り、天然の岩盤をくり抜いて作られた教会なんですが、中に入って思わず息を飲みました。
天井と岩壁の隙間にあるガラス窓から、自然の光がシャワーみたいに降り注いでいるんです。
ゴツゴツとした荒々しい岩肌と、天から注ぐやわらかい光。
そのコントラストが神々しくて。
パイプオルガンの音が岩に反響して、空間全体が楽器になったみたいに響き渡っていました。
派手な装飾で飾るわけじゃないのに、ただ自然の岩と光があるだけで、こんなにも人の心を動かす空間ができるんだなと。
観光客もたくさんいましたが、みんな静かにその空間を楽しんでいて、とても穏やかな時間が流れていました。
ただそこに座って光を浴びているだけで、なんだか心が洗われるような、不思議な体験でした。
この日は他にも、静寂を体験できる「カンピ礼拝堂」や、ヴィンテージショップ「Helsinki Second Hand」なども巡りました。
古いものを大切に使い続ける文化と、自然を敬う心。フィンランドの人たちの精神性に少しだけ触れられた気がします。
次回は、スウェーデンのストックホルムへ。そこで、今回の額縁シリーズを作るきっかけになった、運命的な出会いがありました。