【連載:北欧、大人のぶらり旅】おいしいごはんと、旅の記憶。 Vol.1

Vol.1 ヘルシンキ。やわらかい光と、アアルトのカフェで過ごす朝 ~8月のフィンランドは、なにもかもが素敵でした~

こんにちは、DENTOのフクマキです。

今年の8月、思い切って少し長めのお休みをもらって、北欧に行ってきました。

フィンランド、エストニア、スウェーデン、デンマークの4カ国を巡る11日間の旅です。

若い頃みたいにバックパックひとつで……というわけにもいかないので(笑)、今回はタクシーも使うし、ホテルもしっかり休めるところを選んで。還暦を過ぎた体に優しい、ゆったりとした「大人の旅」を楽しんできました。

■ 街全体が、魔法のような光の中

ヘルシンキのヴァンター空港に降り立ったのは早朝。

荷物を預けるために向かったのは、ホテルではなく「Vintage Glamour Suite」というアパートメントホテルでした。

まるで現地の暮らしをそのまま体験できるような、素晴らしい内装のお部屋。窓を開けると、そこには日本では感じたことのない種類の「光」がありました。

8月の北欧は、夜になってもなかなか日が沈まない「白夜」の名残があります。

その光が、日本の夏のようなギラギラした感じとは全然違うんです。

なんというか、薄いレースのカーテンを一枚通したみたいにやわらかくて、優しい。建物も、石畳も、通り過ぎる人々も、すべてがその淡い光に包まれていて、街全体がソフトフォーカスのかかった映画のワンシーンのようでした。

街を歩いていると、目に入ってくるものがどれもこれも愛らしくて、つい顔がほころんでしまいます。

道路標識の文字のバランスとか、走っているトラムのグリーンの色合いとか、スーパーに並んでいる牛乳パックのデザインひとつとっても、「なんかいいな」って思わせてくれるんです。

決して派手ではないんだけれど、生活の中にデザインが自然に溶け込んでいる感じ。

「ああ、こういう空気感、いいなあ」って、初日からすっかり北欧のファンになってしまいました。

■ 映画みたいなカフェで食べたパイ

2日目の朝は、どうしても行きたかった場所へ。

映画『かもめ食堂』にも出てくる有名な「CAFE AALTO(カフェ・アアルト)」です。

アカデミア書店という本屋さんの中にあって、建築家アルヴァ・アアルトが設計した空間。本棚に囲まれた静かな場所に、真鍮のランプが温かい光を落としています。

ここで食べたブルーベリーパイ(ビルベリーのタルト)が、もう絶品で。

フィンランドでは定番のスイーツらしいんですが、甘すぎなくて、野生のブルーベリーならではのキュッとした酸味がしっかりあるんです。

上に乗っているクリームも甘くないから、ベリーの味を邪魔しない。サクサクのタルト生地と一緒に頬張って、濃いめのコーヒーを流し込む。

旅の疲れが一気に吹き飛ぶような、幸せな朝食でした。

■ 小さなテーブルが教えてくれたこと

食べていてふと気になったのが、テーブルのサイズ感です。

大理石と木で作られた美しいテーブルなんですが、日本のお店に比べるとずいぶん小ぶりなんですよね。

最初は「お皿が乗り切るかな? 狭いかな?」なんて心配したんですけど、向かい合って座ってみると、不思議と心地いい。

相手との距離が近くて、自然と会話が弾むんです。

天井が高くて開放的な空間なのに、手元には親密な空気が流れている。

「広ければいいってものじゃないんだな」

そんな空間設計の妙に、家具屋として妙に感心してしまいました。

次回は、マリメッコの本社で見た「働く人たちの姿」と、市場での美味しい出会いについてお話しします。

 

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